沈黙のフライバイ

読了。
これはやばい。何がやばいって、やばいとしか言えないくらいにやばい。
鼻血が出る。もしくは、前立腺にクる。


えーとつまりですね、SFの短編集です。
作者は野尻抱介。僕はSF物とかを読み出したのはつい最近なので全然知らなかったのですが、ラノベからハードSFまで幅広く著作し、星雲賞とかも貰いまくってる大作家だそうで。詳しくはググるといいです。
で、まぁその野尻抱介の短編集なんですが、とても良い。あとがきの言葉を借りると、気負いがない。
もちろん、緊迫感のあるシーンには十分な緊迫感はあるのですが、それとは別にこう、作品全体に癒し系というかマイナスイオンというかそういう空気が充満している感じ。
登場人物の性格が全体的に楽天的な傾向にあったり、会話の端々からもそういう雰囲気が出ていたり、やっぱSFだからオーバーテクノロジーとかも出てくるんですが、そういう技術とかも何かこう「意外と簡単にできちゃったんだぜ」って感じでポンと提供されたりして、全体的に軽いんですね。
その軽さがつまりどういう事かと言うと、要するに俺好みだと。


あと、割とこう女性の登場人物がやばいんですよ。自然と脳内で、メガネ美少女として再生されるんですわ。
メガネ的な描写があるものはもちろん、その手の描写が全く無くても、何故か自然と。もちろん挿絵などはありません。
これは作者自身のウェブサイトを見れば答えが出るんですが、もし興味のある方は是非、その答えを見る前に、読んでいただきたい。メガネという名の奇跡を体験できるかも知れません。


この「沈黙のフライバイ」には全部で5編が収録されているんですが、特にやばいのは「大風呂敷と蜘蛛の糸」。工学部生の(僕の脳内では)メガネ美少女が超軽量パラグライダーで中間圏を飛ぶ、という話なんですが、どんだけ俺はツボを押さえられているのかと。
序盤のこの大勢で作り上げていく雰囲気も良いし、主人公の性格も素晴らしい。軌道エレベーターとかもかなり好きなガジェットだし、起承転結で言う所の「転」から「結」への接続は鳥肌ものでした。
ラストの締め方も凄く良い。そう、キッチリ話を終わらせる必要は無いんですよ。もちろんエピローグを見たいという欲求もあるんですが、そうじゃない。この「大風呂敷と蜘蛛の糸」という物語は、あそこで終わったんですから、必要無いんです。「この後彼は○○する事になるのだが、それはまた別のお話」という奴が近い。
もちろんそうじゃない作品もあって、それはエピローグなり続編なりがあって然るべきなんですが。


まぁ、つまり何です。
いいから買って読めと。そして野尻抱介は、どんどん書けと。
沈黙のフライバイ
太陽の簒奪者