マリガンをすると不利になる

例えば「平均ちょい下くらいの強さの6枚+非常に重いカード1枚」という様な初手7枚があったとする。そうすると、最後の1枚を取り上げて「実質的にワンマリガンと変わらない」として、しばしばマリガンが為される。これは、非常に多くのプレイヤーが体験しているだろうし、基本的に異論の無い所だとも思う。
一方で、これもやはり非常に多くのプレイヤーは、2度目のマリガンをした場合に、と言うか何だったらワンマリガン後の6枚がキープできないのを確認した時点で、負けた気になる。カード2枚分の差というのはそれほど大きな不利であるからしょうがない。ダブルマリガンを覆して勝つ事が非常に稀な出来事だというのは、経験則でもたぶん間違いないだろう。


MtGというゲームは、土地を展開し、マナを生み出し、そのマナを媒介として手札を行動に変換し、アドバンテージを獲得していくゲームだ。土地は1ターンに1枚までしか出せない。
これが意味するところは、ざっくり言って、

  1. 序盤は、手札の枚数は十分にあっても、土地が展開できていないため、行動が制限される。
  2. 中盤は、十分な土地と十分な手札が揃っているため、ほぼ無制限に行動できる。
  3. 終盤は、土地は展開できているものの、中盤において手札を消費してしまっているため、やはり行動が制限される。

の3点。これに従って、序盤を重視するデッキは軽いカードを採用して行動回数の水増しを図るし、終盤を重視するデッキは消費し切った手札の再充填を図る手段などを確保する。


序盤戦において、ダブルマリガンの不利はほとんど無いと言っていい。もちろん、7枚に対して5枚しか引けないという事で確率的に「事故る」機会は当然増えるが、そもそも事故るリスクを受けてのマリガンなのでそこは置いとくとして。ダブルマリガン側の勝ちパターンの中で最も多いのは、7枚側の序盤のアクションが乏しく、そこを充実した5枚で一気にライフを削るという展開だ。ダブルマリガン側が先手の速攻デッキである場合に起こり易い。
また、MtGにおいては1ターンに1枚のドローがある。ゲーム開始時点では7対5という枚数差も、例えば10ターン後には17対15と相対的に縮まる。この時点での2枚差と言うのは、簡単に言ってしまえば余剰な土地を2枚多く引いてしまえば消える差である。または、1対3交換のカード1枚でイーブンに戻せる差である。終盤戦においても、ダブルマリガンの不利はほとんど消えていると言っていい。
序盤戦で一気にゲームを終わらせれば、あるいはグダグダの終盤戦まで持ち堪えられれば、結果的にマリガンによる不利は無視できるのだ。


ただし、その間の中盤戦において、カード枚数差の影響が強く現れる。
最初に挙げた例の類型である「強い5枚をキープしたA君」対「強い5枚+ほぼ無駄2枚の7枚をキープしたB君」という対決を考える。
序盤は「強い5枚」同士の応酬が想像できる。A君もB君も十分な行動を起こし、かつ互いに十分な対処をしていく。場は一進一退を続けながら土地だけは滞りなく展開され、必然的に中盤戦を迎える。初手7枚における無駄なカードと言うのは、例えば「コストが重く、序盤での活躍が期待できないカード」「4〜5枚目くらいの土地」辺りだろうか。「ウィニーが相手の場合の重ハンデス」の様なガチで無意味なカードも有り得るが、そういうのを除けば、その多くが中盤戦の豊富なマナと行動に大きく関係してくるカードと言える。当初は無駄だと思えた重い(重さに見合ったパワーを持つ)カードがB君の場に展開され、手札の尽きてしまったA君はそれに対処し切れず、終盤戦へとゲームを引き延ばせずに敗北するだろう。あと1枚除去なりカウンターがあればとりあえずイーブンだったし、更にもう1枚カードがあれば逆転、または余裕を持って終盤戦へ臨めたはずだ。いわゆる「ダブルマリガンが原因である敗北」の最もポピュラーなものが、こういう展開だと思う。
序盤戦で終わらせられれば、あるいは終盤戦まで繋げられれば、確かにマリガンの不利は無い。ただし、序盤に終わらせる事は非常に難しく、また終盤戦まで持ち堪える事も難しい。これがマリガンの不利である。


という事をフワッと思って、ファファッと話したのだけど、整理のために残して置こうという感じです。
これを実際のゲームに活用すると、「もう既に大幅に不利なんだから、細かいケアは割り切って、真っ直ぐ序盤戦(または終盤戦)だけ見据えてプレイしよう」という非常に当たり前の地点に戻ってくる。
まあ、当たり前の事でもメカニズムを理解しておくのは大事ですよね。